Hurdy Gurdy Man

人形町に行った。
わしの趣味であるよりはモニの趣味です。
むかしの江戸風な趣が残る裏路地や店構えが好きなよーだ。
脇路地にはいりこんでは写真を撮っておる。

モニが忙しく写真を撮っているあいだ、わしは、ぼけえええーとしてコーヒーを飲みながら立っておる。
子供の時に、ここにもかーちゃんと一緒に寄ったよなああー、とか、あの「雲井」という店で生まれて初めて「どら焼き」を食べたら不味かった、とか、いつもと同じ、そーゆーくだらないことを考えながら待っている。

「ガメ、終わったぞ」という声がすると、次の路地に移動します。

日本語を勉強するひとたちのなかには、ずいぶん日本に惚れ込んで日本狂いみたいになるひともいるが、わしは、そーゆータイプではないよーだ。
醤油が好きになれない、とか、ラーメンてどこがおいしーいんじゃ、とかそーゆーこともあるが、アニメもマンガもほんとうには好きになれないで終わってしまった。
アニメはジブリが好きであって、「となりのトトロ」や何回調べても日本語の題名が頭にはいらない「Spirited Away」を何回も観た。
「火垂るの墓」の冒頭のナレーションを映画の歴史に残る素晴らしい独白と感じます。
マンガでは、なんとゆっても岡崎京子が偉大であると思いました。
カウチでごろごろして、Tim Tam
 http://en.wikipedia.org/wiki/Tim_Tam  
を食べながら、「パタリロ」や「伊賀の影丸」を読むのは楽しかった。

でも、そーゆーことも、要するに「よそごと」であって、なんとなくほんとうに身に付いたものにならない。

たとえば、Keshaが「Where’s my coat?」「Where?」と酔っ払ってつぶやくと、その馴染み深い可笑しさのほうにすぐ引き寄せられてしまう。その瞬間、(うまくゆえないが)するっと、自分が生まれて育った世界にもどってしまいます。
夢からさめたひとのように、と言えばいいだろうか。

「ガメちゃん、畳の部屋に住まないとダメだよ」とゆわれながら、一歩ドアを開けて入れば、友達に、「いまどき西洋国でも靴くらいぬぐやん、ひでーな」とゆわれる、まったく自分の国と変わらないアパートに住んで、スペイン式のコーヒーテーブルや、世界でいちばん座り心地の良い連合王国製のカウチ、モニの国の台所用品、日本のかけらもない生活であった。

わしは「頑張る」「無理をする」というようなことが、なによりも嫌いなので、特に日本に馴染もうとおもったこともなかった。
一応、日本遠征でやろうと思ったことをやりながら、まったく自分の国と同じやりかたで暮らしてきたのでした。
(ははは。ゆってしまった)

嫌なこともあった。
なにより嫌だったのは「立ち小便」で、ゴルフクラブを脇に立てかけて軽井沢の小径で用を足すひと、高速道路の脇にクルマを駐めて(!)、コンクリートにおしっこをひっかけて満足げなひと、秋葉原の駅の真ん前で舗道の灌木に向かってやっているひともいた。
犬さんよりもひどい。
わしは、これが日本にいていちばん嫌なことだった。

あとは、食べ物を食べるときにひとびとが発する異様な音であって、くちゃくちゃ、というか、べちゃべちゃ、というか、あの凄まじくも嘔吐感満点の音のせいで。モニとわしは外食をする場所がクラブ他、少数の場所に限られてしまった。

舌鼓、に至っては、嫌がらせのダメ押しでやってんのか、こら、と立ち上がって怒りたくなるほど気味が悪かった。

そーゆーことに較べると、(あたりまえだが)、立派な高速道路の制限時速が60キロであったり、やたら「見えない税金」がいろいろなものにかかっていたり、若いひとたちの給料がびっくりするほど安くて40代以上にばかり手厚い給料の体系や、議論もくそもない粗雑な頭の「言論人」も、ほんとうは、「腹がたつ」というようなことはなかった。
なんだか、気の毒な感じがしただけである。

考えてみると、かーちゃんシスターがギリオージ
 http://bit.ly/di17TZ  
と結婚しなければ、わしと日本のあいだにここまでの縁は出来なかった。

かーちゃんシスターとギリオージのあいだに出来たガキは、わしのマブダチであって、ふたりガキは、あるいはニュージーランドの野原を意味も無く走り回り、トンブリッジウエルの細い径を「月おやじ」の視線の追究を避けて潜行し、ロンドンのクソ公園を肩を並べて馬に乗ったものであった。

だから日本に興味をもった。
従兄弟が好きだったから。
従兄弟が日本が好きだったから。

いま、思い出して見ると夢のようです。

モニがカメラをもって、こちらに戻ってくる。
あの貝殻に絵が描いてあるのは、なんだ?
と訊いている。
あれは、合わせ貝といって、もともとは絵に因んだ歌をつくって遊ぶんです、あとでは、貝覆いの道具になっちゃいましたけど、と答えると、
モニが「かっこいいな」とゆっておる。

冷たい空気でモニの無茶苦茶形の良いハナの頭が、ちょっとだけ赤くなっておる。
ギリオージが「モニさんのパリ巻」とゆって、うらやましがる、マフラーに埋もれたモニの濃い緑色の眼が笑ってます。

足が疲れたが、もうちょっと足をのばして水天宮に行こうよ。
正式な神社のお参りの仕方を教えてあげよう。
それから、あのホテルの下のおいしいケーキがあるコーヒーショップで、コーヒー飲んで帰ろう。

モニさんが、まぶしそうに空の薄い雲の向こうにある太陽を眺めている。

半年前に日本へやってきたときは、日本を発つことになっている冬は、遠い先のことだね、とモニとふたりで話し合ったものだったが、

なんて透明な感じがする午後の光だろう。
もう、ほんとうに、冬なのだ。

20/November/2010

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